杉の木は花粉症の原因!なぜ伐採しない!?特徴や使い道、種類も解説!
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こんにちは!樹木博士です!
今回は「杉の木」について解説していきますよー!
杉の木は花粉症の原因として有名ですよね。
でも、花粉症の原因なら伐採してしまえばいいと思いませんか?
実は、杉の木を伐採できない理由があるんです…
答えはこの記事で確認してください!
あなたに伝えたいこと
杉の木の特徴は?どんな木なの?
杉(スギ)は、ヒノキ科スギ亜科スギ属の常緑針葉樹(じょうりょくしんようじゅ・一年中緑の葉をつける、葉が針のように細長い)です。(以前はスギ科に分類されていました)
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杉の名前の由来は、幹がまっすぐに伸びることから「直木(スクキ)」「直ぐな木(スグナキ)」、すくすく伸びることから「進木(ススキ)」と呼ばれていたものが、「杉(スギ)」に変わったと言われています。(「杉」は、たくさん並んでいる木という意味の漢字)
他には、「椙(スギ)」という漢字で書かれることもあり、盛んに伸びる木という意味です。
杉の木は花粉症の原因!
「杉の木」と聞いたら、まず花粉症を連想する人も多いと思います、現在、国民の3人に1人が花粉症であると言われ、国民病と言っても過言ではないほど。
国の年間医療費の負担額は、2,800億円以上とも言われています。
原因である花粉を飛ばす杉やヒノキは、樹齢30年から60年のもので、本来なら、建材などの用途に使われているはずなんです。
「使われるはず」の樹齢の木々が、使われず森に残されているため、花粉が飛ぶ量が増大しているというのが現状で、それは、杉たちからのメッセージかも知れません。
なぜ、杉の木がたくさん生えているのか、なぜ、使われないのか、この後、詳しく解説していきます!
杉の木は日本にたくさんある!
杉の木が日本にたくさんある理由は、第2次世界大戦後すぐの時代に遡ります、多くの家屋は戦火に焼き払われ、建て直す必要がありました。
すべての家屋を建て直すには大量の木材が必要になります、そこで使いやすく成長が速い杉の木が大量に植えられるようになったんです。
1960年代の高度経済成長期の建設ラッシュで、木材の需要がさらに高まったため、杉の木もさらに大量に植えられていきました。
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最近になって、花粉症の原因が主に杉の木の花粉であることから、対策として花粉の少ない「無花粉杉」というものが開発され、植え替えが始められています。
この植え替えは1999年にスタートしていますが、約450万ヘクタールあるとされる杉の木の植え替えです、本数に換算すると約90億本という膨大な数になり、そう簡単には進んでいません。
しかし、植え替えをこのまま続けていくことで平成32年の時点で10万本の植え替えを目標としていますが、同じペースで続けていても、すべての杉の木を無花粉杉に植え替えるには単純計算でも「無理」という数字が出ます。
無花粉杉そのものも、最初から花粉症対策事業として作られた品種ではありません。(偶然1本だけ発見された花粉を出さない杉を、研究し多少改良して苗木を増やしたとのこと)
到底苗木の数は足りていませんし、もし全てを無花粉杉に植え替えてしまった時に、自然の生態系にどういう影響が出るのかもわからないんです。
つまり、無花粉杉への植え替えは行われていますが、それだけで杉の木の花粉飛散量を劇的に減らすことは難しいと思われます。
どんどん、伐採して使えばいいのでは?と思いますよね?
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ところが、現在、杉の木の需要はあまりないとのこと。
輸入木材がシェアを占め、杉の木材の価値も下がっています。
では、花粉を飛ばす木は伐ってしまえばそれだけでもいいのでは?
なぜ、需要がないとはいえ、杉の木は伐採されないままなのでしょうか?
杉の木はなんで伐採しないの?
杉の木が伐採されない大きな理由のひとつは、「伐っても使われない」からなのです。
建材用に植えられてから、木が育つまでには50年~60年という時が必要になります、その間に、コンクリートなどの建材が台頭して木材の需要が減り、さらに輸入木材の利用が増えたことで、日本の杉は使われないままに残ってしまいました。
杉の木は価値が低い…
杉の木材の価格帯は、国内最安値のグループに位置するほど安いんです。
なので、伐採したとしても買い手がつかず、費用だけはかかっているので、伐採した業者は赤字になってしまいます。(損になるとわかっていることをする人はあまりいませんよね)
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実際の杉の木伐採中の写真ですが、杉山の中へと、切り出した木材運搬のための道が作られ、大型の重機も使われていますね。(相当な費用がかかりそうなことがわかりますし、木を切ったあとの山肌が露出してしまっています)
伐採できる人がいない…
現在、林業に従事する人は5万人以下に減っていると言われます。
また、そのほとんどが高齢者であるため、杉の木すべてを伐採するのに必要な人材が確保できない状況なのだそうです。
伐採すると災害の危険が…
杉の木は、山林に植えられていて、山の斜面が土砂崩れするなどの自然災害を食い止める役割も持っています。
植えられている状態そのものが災害対策になっているんですね。
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山の所有者がNGを出す場合も…
杉の木の植えられている山林の所有者は、個人のことも多いんです。
所有者が、杉の単価のことまで全て了解のうえ許可してくれた場合は伐採できるのですが、そもそも所有者の行方がわからないことすらあります。
なぜかというと、山林は相続税がかかるので、亡くなった前所有者の名義のまま放置されている現状があるようなんです、こちらも問題のひとつとなっています。
温暖化対策の役に立つ!
樹木が光合成をすることによって、温室効果ガスである二酸化炭素を吸収すること、大気中の有害ガスを吸収、吸着して空気を浄化することはよく知られていますが、杉の木は、その機能が高く、しかも樹齢50年くらいまで衰えないという特徴があります。
日本に生えている他の木(ヒノキ、カラマツ、クヌギなど)よりも、杉の木の方が吸収機能に優れているんです。
そのため、大量に植えられている現在は、地球温暖化防止に役立っているという面もあります。
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さて、杉の木の花粉については、春が近づくとみんなが気にしていますが、杉の木の花って、よく見たことないですよね?(花粉をつけた写真は載せていません)
杉の木の花の特徴や開花時期は?
杉の木の花は、1本の木に雄花と雌花の両方がつきます。
花期は、気温や地方によって差がありますが、3月〜4月頃です。
小さいうちは花をつけません、樹齢が10年を過ぎる頃にやっと枝先に花がつきます。
雄花は淡黄色で長さ約5mm〜8mmの楕円形です。
一見、花には見えないですね、極小のトウモロコシみたいに、小さな粒が集まって1つのかたまりになっています。
↓↓↓↓ (雄花)
「松江の花図鑑」より引用
風媒花(ふうばいか・花粉が風に飛ばされて受粉が行われる花)で、花も虫などを誘いこむ必要がないため、花色も鮮かではなく、蜜や芳香もないんです。
昆虫が進化する前か、まだ活発に活動していなかったとても古い時代に進化した樹木ということです。(恐竜が生息していた時代とほぼ同じくらいに、針葉樹も登場しました)
風媒花の特徴として、花粉が多量にできますが、小型で軽く粘着力はありません。
杉の木は花粉が特に小さくて軽いので、風に乗って遠くまで運ばれます。(そこが人間にとっては困ったところなんです)
雌花は薄緑色~薄橙色、直径約2cm〜3cmのほぼ球形で、枝先に1個ずつ下向きにつき、表面に小さな棘が出ます。
↓↓↓↓ (雌花)
↓↓↓↓ (雌花1つだけ)
雌花の役割は、棘の部分に少量の粘液を出し、飛んできた花粉を受け取って種子を作ることです。
種子って、杉の木の実?これも見たことないですよ?
杉の木の実の特徴や季節は?
杉の木の実は、球果(針葉樹類がつける果実)です。
直径は約2cmで、10月〜11月頃に熟します。
↓↓↓↓ (若い実は緑色)
だんだん、茶色ががってきて、中では種子が出来つつあります。
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実を形成しているのは、木質の鱗片(りんぺん)と呼ばれるものです、20〜30個くっついていて、それぞれに種子が2〜5個つきます。
↓↓↓↓ (断面)
実は茶色に熟すと自然に裂け、中から種子が出ます。
左が熟した実、右下は種が飛んだ後の殻です。(松ぼっくりって聞いたことありますよね?これはスギボックリというんだそうです)
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種子は長さ約5~6mmの長楕円形をしています。
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↓↓↓↓ (種子1個だけ)
ふちに狭い翼があるんですが(飛んで行くため)ちょっと翼には見えないかな~?
私は、杉の実を実際に見たことはなかったんですが、ドライフラワーの1種として手工芸用に市販されていたりするんですね。(実がついている木が近くにある人は摘んで来て自作しているようです)
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杉の木の「葉っぱ」もあまり気にされませんが、いろいろな使われ方をしているんです、どんな用途でしょうか?次の章で詳しく見ていきま~す!
杉の木の葉の特徴は?
杉の葉は、基の部分が枝に密着していて硬く、先は針状に尖り約4mm~12mmの棒状、らせん状に配列していて無毛、表面に光沢があり緑色です。(1本の棒のような形のものが1枚の葉です)
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葉の断面は菱形になります。
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枝全体としては無数の針が付いているようになります。
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杉の葉っぱのいろいろな使われ方
・杉線香
杉線香は、乾燥させたスギの葉を粉末にして、成型し、乾燥させてつくります。
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現在でも、数は多くありませんが、杉だけで作られた線香が国内で生産販売されています。
特徴は、煙がたくさん出ること。(油分が多いため)
つなぎにタブノキなどを混ぜたものもありますが、天然素材だけで作られたものは、いくら煙を吸い込んでも喉が痛くならないというので、お坊さんの中にはリピーターもいらっしゃるとか。
元々は、仏教とともに線香も伝来し、タブノキの樹皮や白檀などで作られていました。
日本では、杉がたくさん生えていて手に入りやすく、芳香もあり、安価に作れるということから、杉の葉が原料に使われるようになりました。
「線香」というと、私は、匂いも煙もちょっと・・・、なんですが、化学合成の原料や香料が使われているものが多いとのことで、天然の素材だけを使ったものには、まだ出合ったことがないのかも知れません。
・焚き付け
薪などを燃やす時、それに火をつけるために最初に燃やす、燃えやすいもののこと、着火剤ですね。
杉の葉には、油分が多く含まれているため、焚き付けに使われているんです。
現在でも、薪を燃料として暖房やお風呂の湯を沸かしている家も多くあり、軒下や庭の一画に杉の葉が薪と一緒に積んであるのを見かけます。(杉の葉は、拾ってくるだけでよいそうで、一般的な着火剤よりもうまくいくとのこと)
杉の葉から、木の端材、薪へと火を移していくのだそうですが、これは知っていると役に立つかも?(キャンプの時や、非常時に焚き火で暖を取りたい時など)
・杉玉
見かけたことはありましたが、これは杉の葉で作られていたんですね~。
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酒林(さかばやし)とも言うのだそうです。
酒蔵や酒屋さんの軒先にかかっているこの杉玉の起源は、奈良県の大神神社(おおみわじんじゃ)に祀られている神様が、酒造りの神様として広く信仰をあつめ、この神社で毎年、今年もいいお酒ができますように、という願いを込めて杉玉が吊るされる習慣が全国に広まったという説が有力です。
本来はこの神社がある三輪山で採れた杉で作られた杉玉を、全国の酒屋、酒蔵がいただきに行くものでしたが、現在では、自分たちで作るか、業者から購入することが多いようです。
造り酒屋では新酒が出来る頃、緑の杉玉が飾られ、「新酒ができました」というサインですね、杉玉の色が茶色くなることで、お酒が熟成したことがわかる、というのが元々の使い方のようですが、最近では、起源とされる神代の伝承も酒屋さんに伝わっているのかいないのか、いつも古い杉玉が飾られていたりするところもあったりと、色々なようです。
日本酒は壺などで仕込まれていましたが、樽の登場以来、すべて杉樽の中に入っていて、杉特有の芳香を活かした樽酒だったんだそうです。
酒米を蒸すための杉桶のことを甑(こしき)と呼び、今でも利用されているなど、日本酒と杉の関係は深いものがあります。
・つまもの
これも、皆さん、見たことがありませんか?
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おせち料理などにちょこっと入っている緑の葉です。
杉の葉っぱだ!って、気付かないことが多いのですが、贈答品の新巻鮭や松茸の下に敷いてあったりします。
見栄えを良くするためと、嵩を増すため、また、抗菌作用があるので使われているんですね。
・フラワーアレンジメント
クリスマスリースの緑の部分、よく生木の枝葉が使われます(杉のほか、ヒバ、モミ、クレストなど)私も最初は長持ちするの?と思いましたが、これが結構、1ヶ月は緑のままなんです。
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クリスマスの少し前の時期、フラワーアレンジメント教室では定番となっていますので、近くで杉の葉が手に入らない人は、花屋さんでも扱っていると思います。(他の素材は、百円ショップなどで揃いますよ~)
・杉の葉茶
え?、杉に可食部分があるの?というか、食べるわけではないですが、昔から、杉の葉を乾燥させたものを細かくして、煎じて飲む健康茶があるのだそうです。
しかも、花粉症に効くという噂が広まったため、急速に飲む人が増えたのだとか。
噂は、少しづつ杉に慣れるとか、杉の葉にアレルギーを抑える成分があるとかいうものですが、今のところ、確たる証拠はないようです。
本来、アンチエイジングやデトックスといった美容のため、気分転換、リラックスしたい時に飲む健康茶なのだそうです。
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・アロマオイル
杉の葉から抽出した精油は、すっきり系のウッディな甘い香りがするそうで、アロマテラピーにも使われています。(リラックス効果があるとのこと)
杉の葉は、安価で手に入り易いので近年、国産の杉精油が注目されるようになり、生産も増えてきています。
また、杉の精油を配合した石けんなど、リラックスタイムに使うコスメにも利用されています。
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・生垣
生垣に杉が使われていることがあるなんて、ちょっと意外でした。(キレイに刈り込まれているわけですから、前を通りかかっても杉だと気付かないのかもしれません)
葉に棘がたくさんあるので、防犯にも役立つのだそうです。
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杉の葉は、結構、多くの使われ方をしているんですね、でも、自然に杉の木が生えている場所ってどこなんでしょう?
杉の木の分布!どこに生えているの?
杉は、日本の固有種で、本州の青森県から屋久島までは自生しています。(北海道各地では、広く植えられています)
第二次世界大戦以前には台湾と朝鮮半島に植えられ、戦後はアゾレス諸島(ポルトガル沖)、レユニオン島(マダガスカル沖、フランスの海外県)、インド、ネパールで植林が続けられていて、現在も木材や防風林として利用されています。
水分と栄養分が豊富な環境を好むため、沢沿いなどに多く、植林する時にも、谷間に植えられることが多い樹木です。
杉の木の種類を紹介!
杉の木には、多くの地域品種があります。
有名なものだけでも、天竜杉、屋久杉、立山杉、吉野杉、北山杉、秋田杉、山武杉など。
・秋田杉
秋田杉は、2種類あり、天然の杉を「天然秋田杉」、人の手で植え育てられた杉を「秋田杉」といいます。
「天然秋田杉」は成長が遅いため、目が詰まっていて固いのが特徴、「秋田杉」は、成長が早く木目が大きいという違いがあります。
「秋田杉」は、平均樹齢200~250年のものが標準といわれ、ツヤが美しく、狂いのない木目に、どっしりとした太さがあり、もちろん高価ですが、梁や柱などとして使われています。
↓↓↓↓(秋田杉だけで組まれた美術館のエントランス)
「天然秋田杉」(特に米代川流域のもの)は、明るく澄んだ色でツヤが良く、軽くて弾力性に富むなどの特徴があり、その優れた材質が認められ、1593年、豊臣秀吉が伏見城建築、造船に使用するため、天然秋田杉材を献上させています。
以来、本格的に利用されるようになったと言われていますが、江戸時代になると、天然秋田杉の伐採がさらに増え、(幕府への上納、江戸での販売用、城下の建築材として多く利用されたため)100年余りで大径木は伐り尽くされてしまいました。
その後、「秋田スギの父」と呼ばれる賀藤景林により、林政改革が行われ、250万本ものスギが植林された歴史があります。(後の「秋田杉」となったわけですね)
現在、天然秋田杉が見られる場所は、仁鮒水沢スギ植物群落保護林(能代市二ツ井町)、コブ杉のある(上小阿仁村)、矢立峠風景林 (大館市)、房住山(三種町)、七座山(能代市二ツ井町)、和賀山塊袖川沢・堀内沢など数ヶ所となっています。
「天然秋田杉」は、年輪が揃っていて木目が細かく、美しく、香りが良い上に、伸び縮みが少ないため狂いが生じにくいなどの特徴も持っています。
その優れた材質を活かした、秋田杉桶樽、大館曲げわっばは、国指定伝統的工芸品となっています。
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平成25年度から、材料の「天然秋田杉」の計画伐採が終了となり、今後は植林された「秋田杉」を使うとのこと、木目の細かい美しさを出すのは難しくなるそうです。(残念ですね… )
・屋久杉
「屋久杉」は、その名の通り鹿児島県の屋久島に自生している杉で、そのうち樹齢1000年以上のものを指して「屋久杉」と呼んでいます。
もっと若い木は、樹齢1000年未満のものを「小杉」、樹齢100年以内の小杉と、人が植えた木は「地杉」と呼び分けているそうです。
一般に、杉の樹齢は長くても500年程度なのですが、屋久島の杉に限っては非常に寿命が長いんです。
屋久杉を代表する古木で、最大級の「縄文杉」(推定樹齢3,000年以上)が有名です。
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屋久島の地質は花崗岩(かこうがん・マグマが地下深くでゆっくり冷却し固まったもの)が多く(御影石と言ったらピンと来るでしょうか?神戸市御影から花崗岩が石材として大量に切り出されたことから、そう呼ばれています)栄養が少ないんです。
そのため、杉の成長は遅く、木目が詰まっています。
また、高温多湿の環境なので、油分を多く含み、腐食しにくいという特徴があります。
2001年に保護区以外の国有林では伐採可能な天然屋久杉を切り尽くしており、現在、伐採はされていません。
では、屋久杉を使った工芸品などはなぜ今も作られ続けているんでしょう?
現在の材料は、というと、過去の伐採で残った切り株、「土埋木」と呼ばれる台風などで自然に倒木したものが使われています。
↓↓↓↓ (屋久杉 工芸品)
・吉野杉
奈良県の吉野林業地帯が産地の杉のことで、国産材のブランドのひとつとなっています。
江戸時代から昭和初期にかけて、酒樽などを生産するため、非常に高い密度で植えられていましたが、その後は間伐が繰り返され、長伐期施業(通常の樹齢(杉の場合は40年くらい)の約2倍、つまり樹齢80年を超える木を伐採する森林施業のこと)が行われてきました。
また、吉野杉は伐採した後すぐに森から搬出せず、「葉枯らし」という処置(乾燥させる)を半年ほど行います。
搬出は斜面が多いため困難でヘリコプターを使用することもあるとのこと。
冬目が硬く年輪幅が適度な細さで均等、完満材(下から上への細りがほとんどないもの)で、節が無く、色目が良いことなどから、高く評価されてきました。
比較的軽いので、加工しやすい特徴がありますが、家具を製作するとなるとヒノキなどよりも柔らかいため、強度が不足してしまうので、身の回り品に多く使われてきたようです。
最近では海外で技術を学んできた職人さんの増加や、特殊な塗料などの登場により、吉野杉の弱点もカバーされるようになり、テーブルなどの大型家具も多数製造販売されています。
↓↓↓↓ (吉野杉ダイニングテーブル・チェア)
・天竜杉
静岡県浜松市天竜区で生育されている杉は「天竜杉」と呼ばれています。
特徴は、曲がりや節が少ないこと、また心材(しんざい・樹木の材の中心に近い部分のことで、腐敗しにくく、細胞壁への色素沈着による色が着く、天竜杉は淡い赤)は樹脂が多くつややかで、水分は少なく、強度、耐久性に優れた高級杉材となります。
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・飫肥杉(おびすぎ)
飫肥杉は、宮崎県日南市付近で育成されている杉です。
江戸時代初期に伊東氏飫肥藩(現在の日南市)の財政立て直しのため、植えられたという経緯があります。
温暖な気候の地なので、杉材としては油分が多く、しなやかさを持ち、耐久性に優れている上に害虫に強いという特徴があります。
現在は、建築材として使われることが多くなりましたが、かつては良質な船材となるため、中国や韓国に輸出されていました。
↓↓↓↓ (飫肥杉で作られたウッドデッキ)
地域品種には、その地方の気候や土質で、数十年から数百年かけて成長したそれぞれの特徴があります。
杉材を選ぶ機会があったら、杉の産地や歴史も含めて調べてみると、目的に合う杉材に出合える確率も高くなりますし、出来上がった住宅や家具調度品に、より愛着が持てることでしょう。
杉には、園芸品種(交配などにより人為的に作った品種)の他、環境によって樹皮の色や裂け方、樹形、枝の出る角度、葉の色・形・長さ・曲がり方などに変化が多いので、自然に少し異なった特徴を持った品種があります。
・「錨杉(イカリスギ)」園芸品種、本州から四国、九州に分布、枝が長く屈曲し、葉が小さくて短い特徴があります。
・「万吉杉(マンキチスギ)」園芸品種、枝が密生し、葉が著しく剛強で開き、鋭く尖るのが特徴です。
・「芽白杉(メジロスギ)」植栽された杉から変化した品種、新芽が白く、葉に斑が入ります。
・「猿猴杉(エンコウスギ)」園芸品種、枝が多く著しく伸び、長い針葉と短い針葉を交互に生じ、そのようすがテナガザルの腕に似ているのが名の由来だそうです。
・「蒼弥白(アオヤジロ)」天然秋田杉の変異種、針葉が黄色に近い独特な色で、材は良質で特殊な芳香を放つため、古くは酒樽の材料として珍重されていましたが、今では、ほとんどが伐採され、繁殖力も弱いため、次世代に残すべき希少種として管理する必要があるとされています。
・「縒杉(ヨレスギ)」園芸品種、葉が湾曲して尖り、枝の周囲にらせん状に隙間なく巻き付く特徴があります。
・「緑杉(ミドリスギ)」園芸品種、葉が冬でも緑色の杉。(一般の杉の葉は、秋になると茶色味を帯びることがありますが、春になるとまた緑色に戻ります)
・「石化杉(セッカスギ)」園芸品種、枝が帯状になる杉です。
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・「黄金杉(オウゴンスギ)」園芸品種、若葉が黄金(こがね)色をしています。
・「魚梁瀬杉(ヤナセスギ)」林業用品種、実生(みしょう)で作られたもののひとつで、地方別の特定の品種。
・「神代杉(ジンダイスギ)」杉材の名称、長期間、水や土の中に埋もれていた杉材で、古代に火山灰のために埋まったものといわれ、青黒く、木目が美しく堅いため、工芸品・日本建築の材料に用いられるものです。
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・「芝原杉(シバハラスギ)」和歌山県の世界文化遺産「熊野の森」の熊野杉のひとつで、葉に柑橘系の芳香があることが特徴。
・「芦生杉(アシュウスギ)」日本海側に生える杉の品種で、裏杉、台杉と呼ばれるもののひとつ、日本海型の杉は幹が下部から大枝に分かれるのが特徴です。(枝が雪に押さえつけられて地面に付き、それが発根するので1本の木に大枝が何本もあるのだそうです。)
↓↓↓↓ (白倉中岳の樹齢500年と言われる芦生杉の巨木)
京都府美山町芦生の地名がついた京都ゆかりの杉で、鎌倉、南北朝時代(1192年~1603年)に、御料林を中心に林業技術が発達したことにより、日本海型の杉の特徴を利用して1本の木から多くの材がとれるように台杉仕立てが盛んに行われたものの、その後、挿し木で増やすことができるようになってからは、1本植えが中心となりました。
↓↓↓↓ (台杉仕立て)
現在でも、庭木用などに台杉仕立てが伝統的に受け継がれています。(たいへん高価なものだそうです)
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芦生杉・花背(はなせ)の天然伏状台杉(てんねんふくじょうだいすぎ)京都市指定天然記念物、推定樹齢1000年以上、根際近くから枝が何本も分枝する巨大な台杉であり、それぞれの枝が支幹となり、老支幹が枯死しても、他の支幹と入れ替わるので、樹勢が衰えません。
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ほかにも本州に、有名な巨木があります。
・「桜実神社の八ツ房杉(さくらみじんじゃのやつふさすぎ)」奈良県宇陀市にある国指定天然記念物、一つの株から八つの幹が伸び、絡まっていて、樹皮は美しい紅色をしています。
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・「山五十川の玉杉(やまいらがわのたますぎ)」国指定天然記念物、山形県鶴岡市の熊野神社境内にある、高さ約36mの杉で、枝張りは東西35m、南北36mと樹冠が均整のとれた半球状であるために「玉杉」と呼ばれて親しまれているそうです。
神社創建(706年)よりのご神木で、当時既に樹齢推定300年ほどであったことから、平成18年に「玉杉1500歳」のお祝いをしたとのこと。(今も樹勢は旺盛で若い木と変わらないのだそう)
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最後に杉の花言葉は「雄大」、これは名木の画像を見ただけでも、ぴったりの花言葉だと思いますよね?!
まとめ
この記事では、杉の木について解説していきました!
まず、杉の木の特徴と、花粉症の原因なのに伐採されない理由について!
・常緑の針葉樹である
・杉の木がたくさんあるのは、第二次世界大戦後から高度成長期にかけて、建材の必要性から大量に植えられたため
・伐採されないのは、使える樹齢になる50年~60年が経つ間に、コンクリートや輸入材により、杉の木の需要がなくなってしまったから
・山に植えられていることで、土砂崩れなどの災害を防ぐ役割、二酸化炭素などを吸収する機能が高いので温暖化を防ぐ役割を担っている
でした!
そして、杉の花、実、葉の特徴や使われ方について解説していきました!
・1本の木に雄花と雌花の両方がつく
・風媒花なので、花の色も鮮やかではなく、蜜も芳香もない
・杉の実は針葉樹がつける球果で、スギボックリとも呼ばれ、秋に茶色く熟して種子を出す
・杉の葉は、棒のような形の1本が1枚の葉
・杉の葉は、線香の材料、焚き付け、杉玉、つまもの、フラワーアレンジメント、杉の葉茶、アロマオイル、生垣など、多用途に使われている
でしたね!
そして、杉の木の分布や種類について、品種が多いこと、天然記念物に指定されている名木、巨木があることについても解説していきました!
・杉は日本の固有種で、本州から屋久島までに自生している、北海道にも広く植えられている
・秋田杉、吉野杉など、有名な地域品種がある
・杉の木は変異することが多く、園芸品種のほか、たくさんの自然変異した品種がある
・屋久島の縄文杉をはじめ、樹齢1000年を超える大木もある
・杉の花言葉は「雄大」
でした!
屋久杉など、樹齢数千年という木もありました、悠久の時を超えてきた樹木を天然記念物などに指定して、伐らずに保護しているんですね。
う~ん、観光資源にはなると思いますが、人間って、万物の霊長とか言ってますけど、万物に驕り高ぶってるわけじゃなく、人間には到底できないことを成し遂げている樹木に対して、素直にすごいな~って、思うこともあるということ?… ですよね?w。
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どうも!樹木博士です!樹木にハマってから早40年以上。
小学生のときから、なぜか樹木が大好きでした。周りの子たちが スポーツやら恋愛やら遊びやらに励む中、私だけは樹木に夢中。
そんな風に育ったので、もちろん青春と呼べるような経験はほとんどありません。ただ、樹木に関しての知識や経験はたっぷりですw
樹木事典では私の樹木人生で得た知識や経験などを惜しみなく公開していきます!
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